no image

2012年11月号 石灰沈着型腱板炎(けんばんえん)の鍼灸治療

石灰沈着型腱板炎「石灰沈着型腱板炎」は、40~50歳代の女性に多くみられ、肩腱板内に沈着した石灰によって生じる急性炎症である。肩関節の疼痛、及び運動制限が起こる。

夜間に突然、激烈な肩関節の疼痛で始まる事が多く、痛みで睡眠が妨げられ、関節を動かすことが出来なくなる。発症後1~4週間、強い症状を呈する急性型、中等度の症状が1~6ヵ月間続く亜急性型、運動時痛などが6ヵ月間以上続く慢性型に分けられる。

この石灰は、初めは濃厚なミルク状で、時が経つにつれ、練りハミガキ状、石膏(せっこう)状へと硬く変化していく。石灰が腱板(けんばん)で増加し、膨張すると痛みが増し、さらに腱板から滑液包内に破れ出る時に激しい痛みを引き起こす。症状的には、肩関節の関節包や滑液包(肩峰下滑液包・けんぽうかかつえきほうを含む)の炎症で、いわゆる五十肩(肩関節周囲炎)の症状とよく似ているが、X線(レントゲン)撮影によって腱板部分に石灰沈着の所見を確認する事によって分別診断できる。石灰沈着の位置や大きさを調べるためにMRI検査、CT検査や超音波検査などが行なわれる場合もある。整形外科治療では、急性期で、痛みが激しい場合は、腱板に注射器で沈着した石灰を破り、ミルク状の石灰を吸引する方法、または、局所麻酔剤の滑液包(かつえきほう)内注射、副腎皮質ホルモン注射などを行う。比較的軽度の場合は、保存療法で、消炎鎮痛剤を内服し、三角巾・アームスリングなどで肩関節を安静にする。

中国医学における石灰沈着型腱板炎の治療は、急性期には、西洋医学的なステロイド注射などの治療と鍼灸治療を併用し行う。疼痛がある程度、治まり、緩解期(かんかいき)に入れば、鍼灸治療、推拿治療、温熱療法、運動療法などで、積極的なリハビリを行う。

特に鍼灸治療では、肩関節周囲の血流を改善し、筋組織の新陳代謝を促進させることで、筋肉及び靱帯の拘縮(こうしゅく)を防ぎ、筋肉の弾力性を取り戻し、肩関節の可動域を回復させ、筋力を強化することができる。鍼灸治療で根源的な治癒を目指すことにより、再発の防止に高い治療効果をあげている。

投稿者:tcm-editor

一覧に戻る